蒸し暑い日がつづきますね。関東地方の梅雨明けももうすぐです。
雨の日ぐらいは家にこもって文献購読にふける、そんな季節感のある生活ですね。
それでは、長谷川ゼミの文献紹介の第二回をお送りします。
<国際協力総合研究所>
国際協力総合研修所(国総研)は、1983年に設立され、JICAの知識・スキルの向上および援助活動に従事する人材の能力向上のための事業を展開する「実践的シンクタンク」としての役割を担う。
事業としては、開発援助の現場での活動経験を概念化・体系化するとともに、事業戦略や援助手法などに関する調査・研究を実施し、これらに関する情報の発信を行う。また、さまざまな研修事業を実施し、多様な開発課題に対応し国際協力活動をマネジメントする能力を備えた有能な援助人材の育成に取り組む。
まず、この本は4章にわかれている。
第1章 総論:開発を巡る昨今の援助動向
第2章 開発経済における援助戦略・アプローチの動向とその特徴
第3章 政治・行政分野における援助戦略・アプローチの動向とその特徴
第4章 社会開発における援助戦略・アプローチの動向とその特徴
冷戦の終焉や先進国の「援助疲れ」、構造調整の失敗などから、1990年代になると援助の有効性(Aid Effectiveness)を高めようという議論が起こり、援助の有効性を左右するものとして途上国のガバナンスに注目が集まった。一方、技術革新と規制緩和・自由化などによるグローバリゼーションの急速な進展の中で、貿易や海外直接投資が貧困層に与える影響が議論されるようになっている。また、民間部門や市民社会も重要な開発主体であるとの認識がますます高まるとともに、政府の役割も改めて見直されている。2001年の米国同時多発テロを契機に、世界の関心は貧困問題とテロとの関係や平和構築に向けられてきているという状況もある。 このような背景の下、近年、国際社会では「貧困削減」が援助の目標とされ、これを達成するために包括的な援助戦略と効率的な援助アプローチが模索されている。これらに対して、今後わが国が課題として取り組むべき課題は・援助戦略上の課題:貧困と成長や貿易・投資との関係、平和構築・援助効果を高めるアプローチ上の課題:能力開発、セレクティビティ(選択的援助)、適切な援助モダリティ、オーナーシップ・パートナーシップ・アカウンタビリティの関係整理・日本の経験とリソースの活用:経験の体系化、市民参加である。
1990年以降の開発経済の特徴としては、貧困削減の主流化、開発課題の多様化・包括化および開発アクターの多様化、グローバリゼーションの進展、がある。これらを踏まえ、貧困削減に資する成長戦略(Pro-poor growth)とグローバリゼーションの途上国への影響を取り上げて分析している。
(1)貧困削減に資する成長戦略
経済成長は持続的な貧困削減の必要条件であるが、同じ成長率でも国によって貧困削減の度合いには違いがある。成長を促進させると同時に貧困を削減する戦略については研究が重ねられているところであるが、マクロ経済の安定、法的・制度的ガバナンスの整備、貧困層の社会・経済資本へのアクセス改善が特に重要だということが述べられている。
(2)グローバリゼーションと途上国
グローバリゼーションは途上国の経済成長と貧困削減に大きな機会を提供する可能性を持っている一方、グローバリゼーションの恩恵を受けることができない国や人々も多数存在する。途上国がグローバリゼーションの機会を活用し、不利益を回避するために、途上国自身が取り組むべき課題としては
1.貿易・投資を促進する環境整備、
2.社会サービスの充実、
3.セーフティ・ネットの構築がある。
援助の役割として途上国のグローバリゼーション参加支援、民間投資への橋渡し、債務救済をする必要がある。今後の課題としてはグローバル・ガバナンスの構築とグローバル化できない国や地域に対する対応がある。
1990年代以降、構造調整への反省、途上国の民主化・市場経済化の進展、冷戦終結と先進国の「援助疲れ」、先進国内の行政改革などを背景として、援助の新しい目的・条件設定を模索し、援助効果の説明を求める動きが出てきた。その結果、援助が効果を発揮するには途上国のガバナンス改革が重要との認識が広がった。このような動きが途上国の公共部門改革の推進や援助効果が上がる国・手法を選定しようとする動き(セレクティビティ)に結びついている。
(1)途上国の公共部門改革
現在、多くの途上国で民主化、市場経済化を目指した成果重視型の公共部門改革が進められている。公共部門改革では次のような制度・仕組みの見直し・再構築と人材管理・制度・仕組みの見直しが行われている。多くの途上国で何らかの形で公共部門改革が進められており、公共部門を対象にした協力を実施する際は改革の現状を十分把握して対応を検討すべきである。
(2)援助の選択性(セレクティビティ)
援助の有効な利用のためには途上国の状況に応じて援助対象を絞り込む必要があるというセレクティビティの考え方が1990年代より議論されている。セレクティビティは選ばれなかった国を切り捨てるというものではなく、国に応じた適切な援助を実施するというものである。セレクティビティの基準は援助国によって異なるが、政治・行政分野の状況を重視する傾向がある。セレクティビティに基づく援助実施に際しては、選択基準となる援助指針の明確化、援助対象にならなかった国への対応、援助様式の選択、などについての検討が必要となる。
1990年代より、社会開発は「開発の目的として達成されるべき人間の自助自立と社会正義の実現」として経済開発と並ぶ重要な開発課題と位置づけられるようになり、より広がりを持った包括的な社会開発の必要性が認識されている。このような動きの中で、「参加・エンパワメント」の位置づけや実践に変化が見られる一方、「持続可能な生計(Sustainable Livelihoods: SL)」のように社会開発の概念を実践に統合しようとする動きも始まっている。 (1)参加・エンパワメント
PRSPアプローチの流れの中で参加・エンパワメントの概念は幅広く包括的なものになり、従来の考え方に加え、マクロ・ミクロレベルの政策プロセスでの参加、エンパワーメント、人権としての参加、市民的債務としての参加という考え方が加わった。参加・エンパワメントを測定する指標の開発が今後の課題となっている。
(2)持続可能な生計(SL)
SLは貧困層の生活に影響する多様な要素を全体像として捉え、包括的な貧困対策の構築を目指すものである。SLは実践例が限られており、さらなる概念整理、具体的な手法や指標の確立など課題は多いが、貧困の多様な要因を総合的に捉えようとする試みであり、今後とも注視していく必要がある。
援助の流れが、すべてのセクターが関わっている「経済開発」・「政治・行政における動向」・「社会開発」の分野から述べられているため、とてもわかりやすかった。
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