【国際機構論】2010年4月13日(火) 長谷川祐弘法政大学教授

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2010年度法政大学法学部
「国際機構論」

■テーマ : 「国際機関の定義・存在理由」
■講 師 : 長谷川祐弘教授
■日 時 : 2010年4月13日(火) 13:30~15:00
■場 所 : 法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎 407教室
■作成者 : 伊藤 菜々美 法政大学法学部国際政治学科2年

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<Ⅰ.講義概要>

※講義に入る前に、年間の授業計画、参考文献、成績等についてお話がありました。

1 国際機関の定義
(1) 国際機関には、大きく分けて、2種類ある。
(2) 1つ目は狭義として、国際社会を構成する主権国家が条約を結んで設立した国際的に独立した機関を指す。この意味に含まれ、一番大きな機関が国際連合である。
(3) 2つ目は広義として、国が条約を結んで出来たものでなくても、公共の目的のために国際的に活動している団体を指す。たとえば、国際赤十字社などである。
(4) この2つのよりも、現在国際的にインパクトを与えている団体として、営利を目的とした私企業、多国籍企業があげられる。また宗教とか特定の私的目的で活動している国際的なグループがあるが、この講義では、このような多国籍企業とか私的団体は扱わない。

2 国際機構の研究方法 
(1) 国際機構を学ぶにあたり有効な方法はとして、記述するだけでなく、分析、概念化、政策化、そして規範的に学ぶことがあげられる。
(2) 記述(Describe)的な方法は、物事を見て、認識し、それを描写することであり、事実をそのままに述べるということを言う。しかし、それで終わってはいけない。
(3) 次に必要なのは、分析(Analyze)な方法である。その意味を考え理解する事を言う。
(4) さらに、普遍的なものを見出すことが必要である。そのために、概念(Conceptualize)な方法をする。
(5) また、国際機関として活動するにあたってたてられた究極的な目的を達成するための戦略を、今その機関が行っている活動を元にして分析をする事が必要である。これを、政策(Policy formulation)的な方法とする。
(6) 一定の国際社会の目標を基準として、国際機構の存在や活動を評価する。これを、規範(Normative)的な方法という。
(7) これらを頭にいれて、個々の研究を行う事が望ましい。

3 国際機構論の研究方法
(1) 法律的なアプローチと政治的なアプローチの2種類があげられる。
(2) 法律的なアプローチは国際機関とは何かを法的に考える事である。例として、国際法の主体がどのようになっているのか、国際機関の権限がどのように変わってきているのか、国際機関にある価値・理念がどのように作用してきているかなどがあげられる。
(3) 国際機構の法的性格として、国家連合説(国際条約によって作り上げた機関である)・機能的統合説(現実に必要性があるために発足し活動している機関である)・法人説(国家を構成する国際的法人である)がある。
(4) 国際機構は国際的な法人のステータスを持っている。そのため、国際法として国際機構というものが決められている。しかし、国内法も関わってくるため、国際法と国内法、どちらが優先されるか問題も起こる。(一般的には、国際法が国内法よりも上であるは、アメリカの場合は国内法の方が優先される。)
(5) 政治的なアプローチでは、国際機構はどのように運営され、何を行おうとしているか、そして何を達成しようとして言うのか、それにあたって発生する障害とはなにかを学ぶ。国際機関がアクターとして、主体的に行動を起こす。その分野においてのアリーナ、活動をみていくべきである。この2つがあげられる。

4 歴史的背景
(1) 13-17世紀・・・都市間での通商活動:ハンセアティック連盟 北欧の都市の庄司会社間の貿易活動の発達。互いに交わした条約に基づき、平和・貿易・友好を深めていく目的。
(2) 17-18世紀・・・主権国家の誕生:30年戦争(1618-1648)後の神聖ローマ皇帝と戦っていた国々がウエストファリア条約(1648)を結んだことにより、政治・経済・文化活動が国家間へと進展した。またこの時代に、植民地獲得時代が到来した。
(3) 19世紀・・・欧州の協調:これは、勢力の均衡と秩序を保つために、主権国家間で取り決められたものである(1814)。これにより、国家間の交通、運輸、通信が促進した。またこの頃、人道支援部門で初の国際機関である国際赤十字委員会が創設された(1864)。
(4) 第一次世界大戦後・・・戦争が2度と起らないようにするために、国際連盟が発足した(1920)。アメリカ大統領、Wilson氏が14の平和原則を提唱。その原則を、ヴェルサイユ条約の一部とした。当初の加盟国は42カ国だった。日本は戦勝国側であり、理事国の一部として、国際連盟に関わった。

5 国際連盟の構造
(1) 総会(Assembly)は、最高意思決定機関であり、加盟国の対等な意思決定参加の権利が認められている。
(2) 理事会(Council)は、フランス・イタリア・日本・イギリスで構成された。当時大国であった、ドイツ・ソ連・アメリカは参加しなかった。その理由は以下のとおりである。
ドイツ・・・第一次世界大戦の敗戦国であったため。
ソ連・・・1917年の2月革命後にソ連を作ったが、まだ国が確固とした地位を納めておらず、世界情勢の方が先をいっていたため。
アメリカ・・・また、国際条約を結ぶ場合、上院の承諾が必要であり、彼らの反対を受けたため。さらにアメリカは孤立的な精神を持っており、他国の戦争等になるべく関わらないようにした。
主要国が参加していない場合、その機関は効果的に活動出来ないという問題が起こる。
(3) 事務局(Secretariat)
(4) 常設国際司法裁判所(Permanent Court of justice)
(5) 国際労働機関

長谷川 祐弘 (はせがわ・すけひろ) ミシガン大学卒業、国際基督教大学大学院修士課程修了、ワシントン大学で国際関係開発学博士号取得。1969年より2006年9月まで国連職員として開発援助、国連平和維持活動に従事。2004年5月より2006年9月まで東ティモール国連事務総長特別代表・国連開発担当調整官・UNDP常駐代表。東ティモ-ル民主共和国大統領特別顧問・親善大使に任命される。法政大学教授。