日本国際開発協力機構(JICA)で理事をされ、マラウイ大使を務め、現在はアフリカ協会理事をなされている柳沢香枝氏は、アメリカは多様な留学生受け入れを、自国の価値観を広め安全保障にも資する投資と考えてきたと思われる。一方、日本の「30万人留学生計画」は経営上の理由が背景にあると思われ、多文化交流の仕組みが乏しく、日本人学生との接点も少ないのではないかと指摘した。
柳沢香枝 京都国際平和構築センター評議員 一般社団法人アフリカ協会理事
私もアメリカに留学していた経験があるが、アメリカが多様な国から留学生を受け入れてきたのは、単に多様な知恵を集めて国を発展させるためだけではなく、むしろアメリカの価値観を世界に広め、「自分はアメリカにいた」という人材を数多く生み出すことを将来に向けた投資と考えているのだと思っていた。安全保障の観点からも、そうした意図があったのだろう。だからこそ、現在のアメリカが「価値観はどうでもよい」という姿勢を見せていることは、非常に残念に思う。
一方、日本の「30万人留学生計画」については、その構想や受け入れのグランドデザインが何であったのかが問われる。意地悪な言い方をすれば、少子高齢化で大学が経営的に厳しくなり、経営を支えるために留学生を受け入れるという意図が根底にあったのではないかとも感じる。私自身もJICAにいたが、留学生事業はすべて英語のプログラムであり、その結果、日本人学生との交流がほとんど生まれていない。多文化交流といっても、日本人学生が留学生と接する機会はなく、場合によっては留学生も日本のことを何も知らずに帰国してしまうことすらある。
そこで質問だが、30万人とされる留学生のうち、日本人と机を並べ、同じ授業を受け、同等に学んでいる学生は一体どれほどの割合なのか。(この点に関して、杉村先生は「大多数が中国、韓国からの学生」と説明があった。)長谷川祐弘氏が言及したJICAの「ホームタウン」事業に関しては、私には背景はわからないが、日本語で言えばよかったのではないかと思う。例えば「国際交流拠点都市」といった表現である。今回の騒動によって、アフリカに対するネガティブな見方が広がってしまう可能性があると考えると、大変残念である。
(リポーター井門孝紀)