【国際機構論】2009年4月14日 長谷川 祐弘 法政大学教授

2009年度法政大学法学部
「国際機構論」~第1回講義~

テーマ : 「国際機関の誕生と成長」
講師  : 長谷川 祐弘 法政大学教授
日時  : 2009年4月14日(火) 13:30~15:00
場所  : 法政大学市ヶ谷キャンパス 富士見校舎 309教室
作成者 : 與古田 葵 法政大学法学部国際政治学科2年

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〈Ⅰ.講義概要〉
1.国際機関の定義
(1)狭義:主権国家である国々の政府が交渉を行い、条約を結んで作りだした機関である。
(2)広義:交渉の場で定められた役割をもとに特定の目的を達成するために活動する団体である。
つまり国際機関とは一般的には、1国だけでなく2カ国以上の国にまたがり活動している団体である。
例:NGO(非政府組織):民間人や民間団体の作る機構・組織であり、軍縮や飢餓救済、環境保護などの問題に関わる活動を行う非営利団体である。
:IGO(政府間機構):国家間の条約を基に作られた。

2.国際機関の種類
(1)政府間国際機関:例:国連、世銀 政府間で決められたもの。グローバルな国際機関であり、世界を対象とした機関である。
(2)地域機構:例:アジア開発銀行(アジア・太平洋における経済成長及び経済協力を助長し開発途上加盟国の経済発展に貢献することを目的として国連の決議により1966年、マニラに発足した。しかしながら、国連の組織ではない。)その他の例としてASEAN、EUが挙げられる。
(3)国際市民社会団体
(4)国際非政府組織:例:NGO、IGO
(5)多国籍企業: 例:SONY,TOYOTA

3.歴史的背景 
(1)13-17世紀: 都市間での貿易活動:ハンセアティック連盟 商人による貿易の発達。目的:互いに交わした条約により平和と貿易、友好を深めていく。日本でも戦国時代に大名の間で規則を持って貿易などが行われてきた。
(2)17-18世紀: 主権国家の誕生:30年戦争後(1618-1648)、ウェストファリア条約を結び、政治、経済、文化活動の国家間への進展。そして植民地獲得時代が到来した。
(3)19世紀: 「欧州の協調」…Concert of Europe 主権国家が集まり秩序を保とうという取り決め。それにより貿易、交通、通信が促進された。また、同時期に人道支援部門で初の国際機関である国際赤十字委員会(ICRC)が創設された。国際赤十字委員会はNGOに所属し毅然とした中立性を保つことを基盤としている。

4.第一次世界大戦後 1914-1917
(1)国際連盟の発足
第一次世界大戦の教訓から1920年に発足した歴史上初の国際機関である。米大統領であるウィルソン氏が十四カ条の平和原則を提唱し、ヴェルサイユ条約の第一篇に基づいて国司連盟規約が定められ、設立した。平和原則の内容の一部として、民主主義の理念に基づき、すべての国が同等の権利を持つこと。そして民族自決権が挙げられる。加盟国は42カ国から60カ国まで増えたが、その当時はまだ植民地というものが存在した。

(2)国際連盟の構造
・総会:最高意思決定機関であり、加盟国の対等な意思決定に参加する権利を認める。
・理事会:発足当時の常任理事国は戦争の勝者国(フランス、イタリア、日本、イギリス)であった。今日、大国であるロシア、ドイツ、アメリカは以下の理由で常任理事国として国際連盟に参加をしていない。
ロシア:共産主義革命があり、1917年にソ連連邦を作る。国際連盟が民主主義国家での創設を目指していたことにより、参加の反対を受ける。
ドイツ:敗戦国であったために参加が認められなかった。
アメリカ:モンロー主義を唱える上院による反対を受ける。
・事務局
・常設国際司法裁判所
・国際労働機関:労働者が権力を持ち始めたことにより創設された。政府、労働者、経営者の三者が代表権を持つ。

(3)国際連盟の崩壊とその原因
・最高意思決定機関が総会にあったことで行動に移すことが難しかった。
・全会一致制であり、拘束力が弱かった。
・国際連盟は軍隊を持たず、権限が経済制裁のみであった。
・加盟国の相次ぐ脱退により国際機関として機能しなくなった。

5.第二次世界大戦後の国際機関
(1)国際連合の発足
世界の安全保障と経済、社会の発展、人道問題解決のために協力することを目的とし、国際連合憲章の下1945年に設立された。

(2)国連の設立は第三段階によって行われた。
・モスクワ会議(1943年):アメリカ、イギリス、ソ連による外相会議で「一般的安全保障に関する四ヵ国宣言」によって第二次世界大戦後に国際的な平和機構を再建する必要性が宣言された。
・ダンバートン会議(1944年):アメリカ、イギリス、中国、ソ連が会国際連合憲章の原案を作成した。
・ヤルタ会議(1945年):常任理事国の拒否権を認めた会議である。
サンフランシスコ国連創設会議(1945年):ダンバートン会議で作成された国際連合憲章原案に基づいて国際連合憲章が採択された。

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〈Ⅱ.質疑応答〉
1.主権国家について
Q.ウェストファリア条約時の主権国家の定義とは何ですか。
A.テリトリーというコンセプトが初めてでてきて主権者が誰かという場合において住民とか市民ではなく、その当時、現地で統治していた人です。

長谷川 祐弘 (はせがわ・すけひろ) ミシガン大学卒業、国際基督教大学大学院修士課程修了、ワシントン大学で国際関係開発学博士号取得。1969年より2006年9月まで国連職員として開発援助、国連平和維持活動に従事。2002年7月東ティモール国連事務総長特別副代表・国連開発担当調整官・UNDP常駐代表。2006年10月に東ティモ-ル民主共和国親善大使に任命される。法政大学教授(2007年4月就任)。