河野太郎外務大臣が国際連帯税を考えるシンポジウムで挨拶 (24/07/2019)

 国連が設定した、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)達成の為に必要な資金を確保する手段として考えられる、国際連帯税を論議するシンポジウムが、衆議院第1議員会館の国際会議場で開催された。谷本真邦氏による総合司会の下、午後1時半から午後5時にわたって、二つの討論会とフランス大使の報告を踏まえた宣言文を採択した。日本国際平和構築協会からは長谷川祐弘理事長、谷本真邦事務局長と井上健監事が参加した。


 開会のセッションでは、国際連帯税創設を求める議員連盟の衛藤征士朗会長と逢沢一郎副会長が挨拶された。衛藤会長はマクロな観点からみて、ボトムアップとトップの両方からの支援が必要であると述べた。逢沢副会長はSDGsを達成する為に必要な2兆5000億ドルをどのように確保するかがチャレンジであると指摘した。その後に金子宏東京大学名誉教授が記念講演をし、津島雄二元厚生大臣がコメントをした。津島氏は自由民主党税制調査会長など務め国際連帯税創設を求める議員連盟の初代会長であった。その他に三原明彦衆議院議員、川田龍平参議院議員、福島瑞穂参議院議員が挨拶した。

 上村雄二横浜市立大学教授が「SDGsと国際連帯税―実り多き理論の為にー」と題して講演した。国連の気象変動に関する政府間パネル(IPCC)が2030年には世界の気温が産業革命前に比べて1.5度上昇すると予測していることを踏まえて世界の二酸化炭素排出量を削減して必要性を説いた。SDGsと人間の安全保障との関係を国際社会の一員となって考え地球規模課題に対処する為に、国境を超える活動に国際連帯税として課税することが必要であると説明した。そして、金融部門では金融取引税やグローバル通貨取引税、交通部門では航空券連帯税、航空燃料税など、多国籍企業、情報通信、軍需産業、エネルギー産業や富裕層に課税する可能性も示唆した。日本が再び指導国となって、国際社会が持続可能な開発資金を確保できるように活動すべきとした。そしてまずは、グローバル通貨取引税、地球炭素税とデジタルサービス税(GAFA税)を勧められた。


 第2部では石橋通宏参議院議員の司会の下で学生たちが日本で国際連帯税を実現するためには何をするべきか、そして国際連帯税から得た資金をどのように使うかが討論された。

 第3部では三菱UFJリサーチ&コンサルティング 株式会社ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部部長の小柴巌和氏の下で木村泰政UNICEF駐日代表、山崎頼良WFP日本事務所政府連携担当官、北島千佳GAVI上級調整官、松本隆司竹田薬品日本メディカル渉外室長、栗脇哲味の素シニアアドバイザー、伊藤聡子日本国際交流センター執行理事、小山万里子ポリオの会代表、川島千裕連合総合政策局長がプレゼンを行い、長谷川祐弘国連協会学術担当理事が最後に国際連帯税は国際社会の歴史的な発展に沿ってグローバルガバナンスの観点から考えられるべきである。その為には現在の国際社会は日本の徳川時代の末期の状態であり、日本が明治維新を成し遂げ260の独立した武家藩から一つの国家となったように、ウエストフェリア体制の下での200近い独立国からなる国際社会も一つの民主的な政治構造に移行することが望まれると説いた。


 第4部としてローラン・ビック駐日フランスクレジットカード大使がスランスでの国際連帯税などが不公平を是正するためにはじめられた資金調達の取り組みについて話された。最後の行事として横浜市立大学の学生南亜迦音と小尾公人が宣言文を読み上げた。宣言文では貧困そして栄養不良状態にいる人々、5歳未満の死亡者、難民・避難民そして気象変動による被害などを克服してSDGsの目的を達成する為に、国債連帯税などの革新的な資金調達メカニズムを提唱した。


 最後に来賓として来られた河野太郎外務大臣が、SDGsを達成するには色々の形態があるが国際連帯税として資金を確保することが望まれるとの考え方を抱いていることを示唆した。そしてG20外相会議などの会議で国際連帯税を議題にして開発のための革新的資金調達を実現するために指導的な役割を果たしていくと述べられた。