【国際機構論】2009年5月12日(火) 紀谷 昌彦様 外務省総合外交政策局 国連企画調整課長

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2008年度法政大学法学部
「国際機構論」

■テーマ : 「日本の国連外交」
■講 師 : 紀谷 昌彦 氏 外務省総合外交政策局 国連企画調整課長
■日 時 : 2009年5月12日(水) 13:30~15:00
■場 所 : 法政大学市ヶ谷キャンパス 富士見坂校舎 309教室
■作成者 : 加藤 遼 法政大学法学部国際政治学科3年

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<Ⅰ.講義概要>

1.なぜ日本にとって国連は重要なのか
(1)国際的にも日本の中でもグローバルイシューの解決に向けての機運が高まっている。気候変動、テロ、感染症紛争などは一国のみにとどまらない問題が多い。日本は先進国として、日本と世界の平和と繁栄を実現するために、これにリーダーシップを持って取り組まなければならない。力を持ったアメリカと国連システムがどう関わるかが今後注目される。
(2)国連は独自の強みがある、多くの国が加盟しており、国連安保理には違法でない武力行使を認める唯一の権限がある。国連の決定は正当性がそれなりにあり、国連には専門的な情報が集まる。しかし、G20や 地域的な国際機関の方が迅速に進められる時もある。
(3)バイの外交と、マルチの外交の連携が重要である。一国と一国同士の外交をもとにマルチで成果を上げる。マルチの場での協力により、一国と一国の関係を強くできる、その意味で、国連の場を活用することが大事。
2.日本はどのように国連を活用するか
(1)規範形成(ルールメイキング)する際に国連を使う。みんなのためになり、日本のためにもなることをアジェンダにすることが重要。開発については、日本は経済成長、自助努力、インフラや教育を重視しており、インドや中国、ブラジルなどの新興国も同様の過程を辿っていく。課題を解決してきた先進国で、経験がある日本は、国際機関や国際会議において発信すべきものを持っている。ただし、英語での発表や発言が苦手なのが課題。ノウハウを世界に広げる場として、国連を活用できる。
3.国連をどう改善していくのか、そのための基盤をどう作るか
国連を使いやすくするためにはどうするか。制度と人と金が重要。日本の強みは、地に足がついた改善主義、プラグマティズム。ただし、人材面で国際的に活躍している日本人が少ないため、底上げが必要。資金、財源の面で大きく貢献しているのに、リターンが少ないと感じている人が多い。政府だけでなく大学、NGO、メディアなどオールジャパンで国連外交に取り組むべき。国連が何をやっているのか、知らない人が多いので、国連について考えている人達のネットワーキングの推進が大事。2010年はミレニアム宣言をレビューし、フォローアップの報告書を出す重要な年。これに向けて、国連を考えようと、外務省は協力団体とともに「いっしょに国連」広報キャンペーンをしている。

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<Ⅱ.質疑応答>

Q国連で日本がグーバルイシューに取り組むとき、不利なアジェンダの時、どうするか
A正論・筋論を通し、親日的の国とバイで話し合い、多くの国とマルチの場で仲間を作る。バイとマルチを有効活用する。

Q目に見えない援助、目に見える援助、日本は外交戦略としてこれに関してどう考えているか、日本人は援助について知っていないのではないか
Aグローバルイシューへの取り組みは不可欠。援助する際、アピールをして援助が増えるならばアピールするべき。援助をする際には結果を出すのが大事。日本の力で途上国に援助する際、ODA広報をやっているが、やはり日本国民にはなかなか伝わらない。日本や、その他の機関が援助をするだけでなく、現地の人達が開発において自らのオーナーシップを持ってやるのが大事。

1964年函館市生まれ。1987年東京大学法学部卒、外務省入省。ケンブリッジ大学歴史学部国際関係論修士号及び同大学法学部国際法修士号取得。在ナイジェリア日本大使館、防衛庁、外務省欧亜局・大臣官房・経済局、在米国日本大使館一等書記官(経済協力担当)、在バングラデシュ日本大使館経済協力班長、外務省国際平和協力室長を経て、2008年8月より、現職。