【NEWS】江田五月参議院議長と長谷川祐弘教授との会談の要旨


[NEWS]2009年9月14日、長谷川教授は江田五月参議院議長を公邸に訪問して、東ティモールの現状について意見交換を行った。長谷川教授は、8月30日に東ティモールでの独立投票10周年記念式典に出席した後、ラモス・ホルタ大統領、シャナナ・グスマン首相、ラサマ国会議長と個別に会見した事を報告した。そして東ティモールの指導者から江田五月先生の支援と理解に対する感謝の印として託された独立10周年記念のコーヒーを寄贈した。江田議長は招待は受けたが、日本国内では総選挙が行われる日でもあったので、東ティモールには行けなかったが、独立投票10周年記念事業の成功を願うとともに日本からの引き続きの支援は欠かさない事を手紙で伝えたと申された。
長谷川教授は引退軍人に対する恩給金や老人への手当てそして教育補助金などを支給するとともに、インフラ整備や地方開発支援などをして、民衆の支持を得ており、治安も安定してきていると報告された。ただし、危惧する点としては、第一に、閣僚や政府公務員の汚職や、ネポティスム、そして第二点として、インドネシア占領時代そして1999年に起こった虐殺などの人類に対する犯罪(crimes against humanity)に対しての正義の執行と法の支配がある、長谷川教授は述べられた。具体的な例としては、8月にインドネシアから元の民兵(Ex-Militia)が戻ったところ逮捕され、初審の裁判の判決により、本裁判がおこなわれるまで留置されることになったが、ラモス・ホルタ大統領、グスマン首相、そしてラサマ国会議長の合意のもとに、留置されいた元民兵を釈放してインドネシア大使館に移送させてしまった。これに対して国連は強い抗議の声明文をだし、東ティモール政府と国連の間に溝ができ始めている状態であると説明された。ラモス・ホルタ大統領は「過去のことは忘れてはならないが、これ以上問題提起はしない。インドネシアに逃亡して今やインドネシア人となった人たちや虐殺に関与したインドネシア人はインドネシアの主権そして法律に基づいて裁かれるべきである」と8月31日の演説で述べた。江田議長は正義とか人権などの普遍的価値は国々とか地域で変わるものでないので、その点は誰もが留意すべきであると申された。
長谷川教授は移行期の正義を成し遂げるにあたって現実に取り扱うことの難しさに鑑み,この分野における権威者としてジョン・ロールズ(John Rawls)の「正義の理論」(Theory of Justice)と正義の意義とは社会への影響を考慮しなくていけないとアマティア・セン( Amartia Sen)が最近の著書「正義という観念」(Idea of Justice)の違いの意義について説明された。そして今後の課題としては、インドネシア政府の下に司法的な手段を用い、それを国際社会、国連が協力していくことであると長谷川教授は述べられた。(池田麻美)