(日本語) 猪口邦子参議院議員が「分断家族」の存在に関して警鐘をならす (19/08/2018)

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 日本の指導者は、他国民や他民族の日本への移住によって起こる問題から、日本人の社会を守ることに専心してきた。日本国憲法に掲げられた、国際社会で「名誉ある地位」を得るためには、普遍的な理念に基づいて人権・人道的規範を遵守することが求められている。


 日本国際平和構築協会は、8月19日にJICA地球ひろば会議室にて、日本での難民と移民の受け入れ状態と問題点を、東京大学学生が研究発表をしたのちに、滝澤三郎 日本UNHCR協会理事長と佐藤美央 IOM駐日代表に国際的な見地と見解を述べていただき、五人のパネリストの方々が意見を述べられました。また猪口邦子参議院議員が政府の政策などに関して見解を述べられ、質疑応答を含めた討論が行われた。

竹原遼太郎・山田涼華(東京大学学生)


 初めに東京大学学生の竹原遼太郎くんと山田涼華さんが「日本での難民移民問題の現状と課題」について発表した。日本における難民の現状として難民申請数が2015年から急激に増えている一方、認定数は減少傾向にあると報告された。背景として就労目的の申請が急増していることが難民申請につながっているが、認定数が少ない理由は、明らかに就労目的で難民ではないという事例が多いこと、また、実際の紛争地からの難民申請数が低いことが挙げられます。難民を取り巻く問題として(1)医療サービスへのアクセスの困難、(2)市民生活における婚姻ビザ取得の難しさ、そして(3)入国管理局での個人の尊厳と自由の欠如が言及された。移民については経済移民に焦点を絞り、低賃金など待遇をめぐる様々な問題点や不正の温床、人身売買に関し、日本政府として対策は取っているものの、実効性には疑問の余地があり、日本はもはや移民大国でもあるので、保護のためにさらに踏み込んだ措置を取る必要があると強調されました。

滝澤三郎 元UNHCR 駐日代表


 学生の発表の後に、二人に専門家からの説明があった。滝澤三郎 日本UNHCR協会理事長が、新しいMigration Governanceに関して見解を述べられた。ジャムス・ホリフィールド(Jamese Hollifeild)を引用して、難民・移民問題について整理する際には、(1)Security(国境管理)、(2)Rights(人権)、(3)Culture(文化)、そして(4)Markets(経済)という4つの視点があり、特に4つ目の経済的アプローチこそ難民を受け入れる新しい方向性として力を入れるべきだと述べた。それは、日本は難民・移民の人権を守る以上に自国の文化を守る風潮が根強いため、受け入れる社会体制が存在しないことであり、国連内でも人権を中心としたアプローチに限界が出てき始めてきたと指摘した。経済的アプローチによって、戦火から逃れてきた難民というイメージから、生産性を生み出す労働者に移り変わり、社会にも受け入れられやすくなると可能性をあると語った。

佐藤美央 IOM駐日代表


 佐藤美央 IOM駐日代表からは、日本が置かれているグローバルな課題としての人の移動に関する統計、並びに、人身取引被害者や困難な状況にある非正規滞在者に対するIOM支援事業が紹介された。「移民」という言葉に世界共通の定義はなく、国連や各国政府で独自の定義を設けています。IOMとしては世界の7人に1人が移民であると考えており、世界の人口に対する国際移民の割合は、およそ3.4%で、緩やかに上昇しています。国連とIOMの移民の定義に関する違いは、国連においては国際移民を移民とみなし、加えて滞在期間の違いで国際移民を区別し統計をとっています。2017年において2億5,800万人が国境を越えた移民としています。一方、IOMは、留学生や労働者など移動する全ての範囲の人を移民とみなします。このように移民が増えた要因としては、21世紀に入って移動のインセンティブが圧倒的に多くなったことを挙げられました。日本を含め世界的に排他主義が蔓延る中、そのような現状に悲観的になるのではなく、昨今、人の移動も含めた多国間合意が続いており、移民の経済、社会に対する貢献に目を向ける必要があると述べられました。最後には、SDGsと移住に関するグローバルコンパクトといった枠組みを用いて、より社会全体で関心を持ち続けることの重要性を訴えました。

水野孝昭 神田外国語大学教授・元朝日新聞論説委員


 その後のディスカッションでは、花田吉隆 元東ティモール大使から欧州の混乱から何を学ぶべきかとして四つの点が挙げられた。(1)2015年の大量到来により欧州の政治地図は一変してしまった、(2)その後流入数は激減したが混乱が収まる兆しはない(3)この問題は単なる数字だけで議論できるものではなく、人々の心情、伝統等に対する深い洞察が必要、(4)社会の弱者がより弱いものを迫害するとの現象に注意がいる、(5)安定した受け入れの鍵は「大量でない」と「同化」である。日本が、外国人受け入れの根本を議論することなく運用で受け入れ拡充を図ろうとするのは問題である。国家としての病弊を見る思い、との指摘があった。続いて、神田外語大学の水野孝昭教授が、難民問題は一義的にはhumanitarian(人道主義的)な次元から捉えるべきであって、移民受け入れとは本来は異なる問題である。グローバルな人道危機にどう対処するのかという議論と、日本の少子高齢化や労働力不足の問題とは分けて議論するべきだと指摘された。

 元コスタリカ大使で長崎大学の猪又忠徳教授は、(1) 福島の避難民を含め、大規模自然災害からの避難民の数が紛争からの難民をはるかに凌駕する中で、後者の庇護や人権保護に傾斜するユーロセントリズムは普遍性に欠けた移住問題への取り組みであること、および、(2) 移住と難民の課題領域における二つの別個の地球協約の採択は国際行政の断片化のリスクを包含することを警告した。

猪俣忠徳 元大使 ・ 米川正子 立教大学教授 ・ 中西直明 元外務省職員


 立教大学の米川正子教授は、難民を労働者と呼ぶことの危うさや労働者としてみなすことを今一度再考する必要があり、難民を受け入れる以上になぜ難民になったのか、更には難民をつくらない環境をどのようにつくるのか、など、より大きな視点からみるべきだとコメントを頂きました。JICAシニア・アドバイザーの井上健氏からは、ヨーロッパにおける難民問題の現状を紹介いただき、それを踏まえた上で日本の対応の姿勢に懐疑を示されました。今後、移民のガバナンスにおける理念として平和共存を強調されました。

猪口邦子 参議院議員・外交防衛委員会理事


 特別招待者として参加された猪口邦子参議院議員からは、新しい外国人の受け入れ体制に関して、家族を連れてきてはいけない「分断家族」の存在に関して警鐘を鳴らされた。そして、人道的に扱う時に重要となってくるのは医療保険であり、それを最善のかたちに整える必要性を訴えられました。紛争の根本原因(Root Cause)を考える際には、戦争のみではなく経済的、さらには気候変動の難民が昨今増えている中、適用法による打開策が必要であると指摘された。日本に来て就業するベトナム人の数が中国人以上になった背景を説明された。日本の移民・難民の受け入れで懸念されるテロリストの可能性については、国民皆保険の制度を1ミリも崩さない限りシャットアウトできると述べたのは興味深かった。

佐藤安信 東京大学教授


 参加者による討論では、佐藤安信 東大教授が難民や避難民の問題は各々の国々の状況により異なることが指摘された。そして就業状況は法律上の問題だけでなく、社会的問題が多々ある点に言及された。

 最後には長谷川祐弘理事長が、アインシュタインの言葉を引用して、知識人の集まりであるヨーロッパでは人道主義に基づいて多くの難民や移民を受け入れたが、異民族の人たちと「統合」して住むことの難しさを悟り、問題解決の方法を模索している。一方、日本の指導者は他国民や他民族の日本への移住によって起こる問題から日本人の社会を守ることに専心してきた。外国人であり、普遍的な人権を軽視してきて、国際社会で尊敬されることは出来ない。日本国憲法に掲げられた、国際社会で「名誉ある地位」を得るためには、普遍的な理念に基づいて人道的規範を遵守することが求められていると述べた。

(リポーター: 栗原 沙莉衣)